<問い>
憲法47条には「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」 とありますが、これに関連して次の問いに答えなさい。
  1. 1つの選挙区の中から1人の代表者を選ぶ選挙制度の名称を答えなさい。
  2. 1つの選挙区の中から2人以上の代表者を選ぶ選挙制度の名称を答えなさい。
  3. 各政党の得票数に応じて議席を配分する選挙制度の名称を答えなさい。
  4. 衆議院議員の定数を答えなさい。
  5. 衆議院議員総選挙で採用されている選挙制度の名前を答えなさい。
  6. 参議院議員の定数を答えなさい。









<解説> 
 「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「三権分立」の図を頭に置きながら勉強するようにしてください。

三権分立のしくみ

 どこの何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。もし、三権分立が分からないという人は、以下のシリーズを必ず見てから解説を見るようにしてください。

 それでは、簡単に意味を解説します。


 参政権を具体的に行使する場面の1つが選挙ですが、まずは選挙制度を理解するうえでの基本となる点を押さえましょう。

小選挙区制と大選挙区制のイメージ
 
 1つは小選挙区制(しょうせんきょくせい)大選挙区制(だいせんきょくせい)についてです。小選挙区制は、各選挙区のうち最も多くの票数をとった候補者1人だけが当選できるという制度です。これに対して、大選挙区制は、2人以上の候補者が当選する選挙制度です。以前の日本は中選挙区制がとられていましたが、これは大選挙区制ほどに選挙区は広くありませんが、2人以上の候補者が当選するという意味で大選挙区制の仲間です。

 試験によく出るのは、小選挙区制と大選挙区制のちがいです。

小選挙区と大選挙区のちがい
 ポイントは小選挙区のデメリットである「死票(しひょう・しにひょう)が出やすい」という部分と「選挙にお金がかかりやすいかどうか」を押さえるのがここの急所です。

 死票というのは、当選した候補者以外に入れられた票のことです。例えば、上の絵のA選挙区で甲野一郎さん、乙野二郎さん、丙野三郎さんが立候補して、甲野一郎さんが当選したとしましょう。それぞれの得票数が、
  • 甲野一郎さんが1000票
  • 乙野二郎さんが900票
  • 丙野三郎さんが800票
だとすると、死票は1700票ということです。これがもし大選挙区制で2人が当選するとなると、落選するのは丙野三郎さんだけになるので、死票は800票となります。これが「死票が出やすい」の意味です。

 お金に関しては、「小選挙区は選挙区がせまい→回るところも少ないのでカネがかからない」を覚えておけばOKです。大選挙区制はその反対ですから。

 小選挙区制大選挙区制の違いが出題されるほか、日本ではどのような選挙制度がとられているかも出題されますから記憶しておきましょう。


 次に、各政党の得票数に応じて議席を配分する選挙制度について見てみましょう。比例代表制(ひれいだいひょうせい)です。比例代表は次のように候補者を決めていきます。
  1. 各政党で候補者を決め、立候補者名簿を作成する。この時、名簿の中で事前に順位をつけて順位の高い順番に当選者を確定する方法と事前に順位をつけない方法で当選者を確定する方法がある。
  2. 有権者が投票する。
  3. 各政党の得票数に応じて議席数を確定する。
  4. 当選者が確定する。
 中学生レベルであれば、まずは3.の計算方法について確認しましょう。具体例を見た方が分かりやすいので、下の表を見てください。

ドント方式

 例えば、A党が1000票、B党が600票、C党が200票の票数を獲得し、この比例代表選挙区からは5名の候補者が当選することになっているとしましょう。

 上のように1から順番に割っていって、「商」を出していきます。そして、「商」の数の大きい順番に並び替えて、この選挙区の場合は5番目の「商」までを計算し、獲得議席の数が決まります。したがって、上の例でいうと、A党は3議席、B党は2議席、C党は残念ながら議席がないという結果になりました。

 比例代表はこのように決めていきます。


 それでは我が国において、どのような選挙制度を採用しているのか?衆議院議員総選挙と参議院議員総選挙をそれぞれ見ていきます。 


● 衆議院議員総選挙について
 まずは復習ですが、衆議院議員の定数は475名です。その475名の議員がどのように決定されるのかを見ます。絵を見てください。

衆議院議員選挙のしくみH29-7



 衆議院議員総選挙においては、2つの選出方法があります。1つが小選挙区制であり、もう1つは比例代表選挙区制です。小選挙区選挙においては289名の議員、比例代表選挙においては176名の議員を選出します。(平成29年7月17日公職選挙法改正により定数変更)



 ここから先は社会科の得意な生徒向けのハナシなので、苦手だと思う人は参議院議員選挙のところまでは読まずにとばしてください。



 小選挙区制は全国を289区に分けて、それぞれの選挙区から1人の候補者が当選します。

 比例代表は、全国を11のブロックに分けて、それぞれのブロックから複数人の候補者が当選できる仕組みになっています。
  1. 各政党で候補者を決め、立候補者名簿を作成する。この時、名簿の中で事前に順位をつける
  2. 有権者が政党に投票する。
  3. 各政党の得票数に応じて議席数を確定する。
  4. 当選者が確定する。


 あらかじめ立候補者名簿を作成する時に、名簿の中で事前に順位をつけて順位の高い順番に当選者を確定する方法を取ります。中学レベルではありませんが一応知識を紹介しておくと、こういった比例代表制のことを、拘束名簿式比例代表制(こうそくめいぼしきひれいだいひょうせい)と呼ぶことがあります。有権者は投票用紙に政党名を記入し、投票します。そして、順位の高い順から当選者を確定します。

 ただ、衆議院議員総選挙における比例代表制には少し分かりにくい制度があります。
  1. 小選挙区と比例代表区とで重複立候補(ちょうふくりっこうほ)ができる。
  2. 重複立候補をした候補者に限り、小選挙区で落選しても比例代表区で復活することができる場合がある。
 1番目は小選挙区と比例代表区とでダブって立候補ができることを意味します。

 2番目は重複立候補をした人の中で小選挙区で落選した候補者が比例代表区で復活できる場合があります。小選挙区制と比例代表制とに重複して立候補している場合、その全員または一部の候補者を同じ順位にすることができます。例えば、名簿の中に同じ2位の候補者が何人もいるといったことが起こり得るということです。そして、同順位の候補者の中では、惜敗率(せきはいりつ)の大きい順番で復活当選を果たすことができます。惜敗率というのは、小選挙区における最多得票者に対する得票の割合のことを言います。

 たとえば、甲野一郎さんが100票が当選して、乙野次郎さんが90票をとったけれども落選してしまった場合です。惜敗率は次のように求めます。

90(乙野次郎さんの得票数)÷100(甲野一郎さんの得票数:最多得票者)×100 = 90.0%

 重複立候補者すべてについてこれを算出し、これの多い順番から当選者が決まります。

 先ほど小選挙区制には死票が多いと言いましたが、こういった惜敗率を求めることで死票を押さえる役割を果たしているのです。


 そして、日本の衆議院議員選挙の選挙制度のことを、「小選挙区比例代表並立制」と言います。長いなぁと思うみなさんもいると思いますが、意味の切れ目を考えればどうってことはありません。

小選挙区 / 比例代表 / 並立制

こうやって分ければよく分かりますね。


● 参議院議員総選挙について
 まずは復習ですが、参議院議員の定数は242名です。その242名の議員がどのように決定されるのかを見ます。絵を見てください。

参議院議員選挙のしくみ

 参議院議員選挙には2つの選出方法があります。それは、「選挙区選出」及び「比例代表選出」です。選挙区から146名、比例代表選挙区からは96名が当選します。




 ここから先は社会科の得意な生徒向けのハナシなので、苦手だと思う人は参議院議員選挙のところまでは読まずにとばしてください。





 まずは選挙区については大選挙区制を採用しています。選挙区の中には1名というところもありますが、2名以上の候補者を当選させる選挙区もあります。だいたい都道府県ごとに選挙区が設定されていますが、一票の格差の問題で一票の格差を解消するために、2つの都道府県にまたがって1人選出されるという選挙区も存在します。選挙区から当選する議員は全部で146名いらっしゃいますが、参議院議員は3年ごとに半数が改選されます。したがって、選挙ごとに146議席の半分の73議席をめぐって選挙戦が繰り広げられるわけですね。

 次に比例代表選挙についてなのですが、衆議院と同様こちらも負けずと複雑です。
  1. 各政党で候補者を決め、立候補者名簿を作成する。事前に順位はつけない
  2. 有権者が政党または候補者名簿に書かれている個人に投票する。
  3. 個人名が書かれた票は、その者が所属する政党の得票となる。そして、政党の総得票数に基づいてドント方式により、 各政党の当選人の数が決まる。
  4. 個人票の得票数に応じて順位付けされ、当選者が決定する。
 赤字の部分が衆議院議員総選挙と異なる点です。最後に複雑な参議院議員通常選挙のしくみをまとめてみましょう。

参議院議員通常選挙の投票のしくみの詳細


 今日のところはくわしいところまで説明しましたが、優先順位としてはまず<問題>にきちんと答えられるようにしてください。

 そして、ボクたちは日本人なので、ボクたちの代表者をどうやって決めるのかは一般常識としてきちんと知っておくべきだと考えたので、くわしめの説明をしてみました。理解できるところは理解して、そうでないところはとりあえずは読み飛ばしていただいても構いません。

 そういうわけで、今日の講義はここまでです。


<答え>
  1. 小選挙区制
  2. 大選挙区制
  3. 比例代表制
  4. 475名
  5. 小選挙区比例代表並立制
  6. 242名


<岐阜県公立高校過去問出題実績>
[平28-3-3-(1)]・・・比例代表制度について、「得票」「議席」という言葉を使って説明する問題