<問い>
  1. 予算案はだれが提出することができるか。
  2. 予算案が国会に提出されたとき、参議院から審議を開始することはできるか。
  3. 利害関係者や学識経験者などから意見を聴くことが必要とされた場合に開かれる公聴会は予算の審議を行う場合に開かなくてもよい場合があるか。





 

<解説> 
 「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「三権分立」の図を頭に置きながら勉強するようにしてください。

三権分立のしくみ

 どこの何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。もし、三権分立が分からないという人は、以下のシリーズを必ず見てから解説を見るようにしてください。

 今日は予算の成立過程について見てみます。衆議院の優越のところで少し見ましたが、今回はまた違った角度で予算の成立過程を見てみます。

衆議院の優越

 まずは以前から何度もこのブログに載せている予算の作成のプロセスの図を見てみましょう。

予算の作成

 まずは内閣が予算案を作り、それを国会に予算案を提出します(憲法第86条)。予算を作成するのは内閣だという点が急所です。ここを国会と言葉を変えてしまうと、正解っぽいっ文章があっという間にできあがります。「正しいもの(誤ったもの)を選びなさい」という正誤問題対策です。

 国会に予算案が提出されたら、衆議院から予算案が審議される点が第2の急所です。衆議院から審議を開始しなければならないとしているのは予算の作成の場面だけです。ですから、法律案の審議や内閣総理大臣の指名などは参議院から審議を開始しても法的にはOKなのです。これを予算先議権(よさんせんぎけん)と言います。これが憲法第60条1項の内容です。


 ここからが新しい話です。

予算が成立するまでのプロセス

 前回の法律案の審議の過程の図とはどこが違うのかを発見することが今回の急所の知識です。

法律ができるまでのプロセス

 予算と法律案の審議の違いのポイントは2つです。
  1. 予算は衆議院から必ず審議を開始しなければならない。
  2. 予算の審議の際には、必ず公聴会を開かなければならない
 それ以外は同じだと思ってください。予算の審議について試験で聞かれるポイントはココです。


 あとは「衆議院の優越」のからみで、衆議院と参議院とで異なった結論が出たときにどのような対応をすべきかのちがいを押さえるだけです。ここからは復習です。

 「衆議院と参議院とで異なった結論が出たとき」または「衆議院で予算が通ったのに30日以内に参議院で予算が可決されないとき」にどのように対応すべきなのかが憲法60条2項に書かれています。

憲法60条2項
 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
 赤字の数字は、分かりやすくするためにボクが付けました。①または②の場合が起こったとき、「衆議院の議決を国会の議決とする」と書いてあります。

 この点、「法律案の議決(憲法59条2項)」の場合と比較すると、内容がより理解できると思います。答えはここでは書きませんが、次のポイントで違いを整理するとよいでしょう。
  1. 衆議院の先議権はあるか?
  2. 議決に際して参議院に与えられた期間はどれぐらいか?
  3. 参議院が議決しない場合の効果はどのように異なるか?
  4. 衆議院と参議院の議決が異なった場合、衆議院での再議決は必要か?
  5. 両院協議会は必ず開かなければならないか? 
 これをまとめることを今日の宿題としましょう。



<解答>
 
  1. 内閣が提出する
  2. できない。
  3. 必ず開かれなければならない。