平成29年度の岐阜県公立高校の入試問題では並び替え問題が2題出題されていますが、いっしょに考えていきましょう。

 今回は解答・解説編です。その前に、問題をもう一度振り返ってみましょう。
「モンゴルの襲来は幕府の支配に影響をあたえた。その後、幕府は滅亡し、南北朝の動乱が起こった」ことについて、次のア~ウのことがらを、年代の古い順に並べ、符号で書きなさい。

ア 足利尊氏は、征夷大将軍に任命され、全国の武士をまとめようとした。
イ 幕府は、生活が苦しくなっていた御家人を救おうとして、永仁の徳政令を出した。
ウ 後醍醐天皇は、天皇中心の新しい政治(建武の新政)を始めた。

[平成29年度岐阜県公立高校1-5]
 
 それでは解説をしていきたいと思います。





 

<解説編>
 今回は、鎌倉時代末期から室町時代初期にかけての時代の並び替え問題でした。

 一般的に、江戸時代以前は幅の広い時代のできごとの並び替えをさせる問題が多かったのに対し、明治時代以降はわりと細かいできごとを並び替えさせる問題が多かったように思います。

 しかしこれはあくまで一般論であって、出題者のさじ加減でいくらでも出題傾向を変えてくることはあり得ます。昨年度(平成28年度)の問題はわりと受験生が試験対策が手薄になりがちな分野からの出題でしたが、平成28年度から比較的古い時代のできごとについても細かいところが出題され始めてきているようです。このブログでは平成20年以降の岐阜県公立高校の入試問題で出題された全並び替え問題の解説を行っていますが、このブログを利用して出題の変化をさぐってみるのもありでしょう。


 前置きはここまでにして、解説を始めましょう。 

ア 足利尊氏は、征夷大将軍に任命され、全国の武士をまとめようとした。
 これは問答無用で年号を正確に記憶しておかなければならないできごとです。1338年です。足利尊氏という人物名から初代室町幕府初代将軍だ!と条件反射で連想が始まっていなければ、基礎力不足です。

イ 幕府は、生活が苦しくなっていた御家人を救おうとして、永仁の徳政令を出した。
 これも永仁の徳政令という言葉から鎌倉時代末期のできごとだと判断できなければなりません。そして、1297年という年も頭で思い浮かべておきたい年号です。

 背景を説明すると、元寇(げんこう)が終わると、幕府に従っていた武士である御家人の生活が苦しくなりました。その背景としては次のようなことがありました。
 元寇で多額の出費があったのに、幕府は御家人に十分な恩賞が与えられなかった
  ↓
 御家人の生活が苦しくなる
  ↓ 
 御家人は土地を質に入れたり、借金したりする
 また、鎌倉時代は分割相続といって、女子も含めて子どもたちが平等にだんだんと土地を分割して相続していきました。すると、時代が下るにつれて相続を受ける土地の面積は減っていきます。すると、御家人の農業収入はどんどん減っていくことを意味します。しかし、御家人は幕府に対して奉公(ほうこう)しなければなりませんが、奉公にかかる負担はこれまでと変わることがありません。御家人の負担は増すばかりです。ですから、御家人は借上(かしあげ)や土倉(どそう)から借金したり土地を質に入れたりするわけですが、このような状態であれば借金を返すことはできません。すると、土地を質入れしているわけですから、借上や土倉に土地を取り上げられるハメになります。

 こういう状態を見ていた幕府は、借金帳消しを宣言します。そして土地の売買や質入れを禁止します。これが徳政令(とくせいれい)です。


ウ 後醍醐天皇は、天皇中心の新しい政治(建武の新政)を始めた。 
 建武の新政という言葉から、これも条件反射的に1334年という年を連想できていなければなりません。

 鎌倉幕府が滅亡した後、天皇中心の政治を目指した後醍醐天皇(ごだいごてんのう)が自ら政治を始めました。これが建武の新政です。

 しかし、公家びいきな政策に嫌気を感じた武士たちが建武の新政を倒そうと立ち上がりました。その代表的な人物が足利尊氏です。この問題でいうと、アにつながっていきます。



 冒頭で、江戸時代以前の時代でも細かいことが問われるようになりました!と言いましたが、政治の歴史に関しては、時代区分とともに具体的な年号も含めてきちんと流れとできごとの背景を把握しておかなければならないことが分かると思います。


 歴史の並び替え問題に限りませんが、過去問というのはこのように何をどれぐらいの深さまで勉強しなければならないのかを明らかにするための道具でもあります。問題に正解できたかどうかだけではなく、課題を発見できる能力が受験生には求められています。自分でこれができない人は、塾や家庭教師などを上手に使って課題を見つけて、そしてそれぞれの弱点に応じて勉強していきましょう。


<解答>
イ→ウ→ア