前回に引き続き、三権分立制度の話です。


 前回は「三権分立制度」の意味と目的について解説しました。今日は日本の憲法に書いてある三権分立制度のお話についての勉強をいっしょにしていきます。


 今回の内容はとても大切で、最終目標は教科書やノートを何も見ずに人に対して説明できるようになるところまで(知らない人に授業ができるまで)しっかりと学習しなければなりません。最初から完璧にできるわけがありませんが、ここは時間をかけてもよいので何度もやってください。到達度としては、この記事を読んだ段階で7割から8割は見ずに言えるように、そしてそれぞれの国家機関を一通りやり終えた段階で10割、要するに何も見ずに説明できることを目指しましょう。そして、それぞれの国家機関(国会・内閣・裁判所)について勉強をするたびに必ずこのブログの記事に戻ってください。これが目次になります。 


 それではいつものように問題を通して理解を深めていきましょう。

<問題>
  1. 「三権分立」の「三権」とは何か?
  2. 日本国憲法において、「三権」はそれぞれどのような国家機関が持っているのかを答えなさい。
  3. 国民と国会の関係について説明しなさい。
  4. 国会と内閣の関係について説明しなさい。
  5. 内閣と裁判所の関係について説明しなさい。
  6. 裁判所と国会の関係について説明しなさい。
  7. 裁判所と国民の関係について説明しなさい。 

 これからあれやこれや説明しますが、このページの最後の箇条書きのような感じで説明できるようにしてください。







<解説>
1. 「三権分立」の「三権」とは何か?
 前回の復習ですね。「立法権」「行政権」及び「司法権」ですね。言葉の意味は前回の講義で説明済みなので、分からないという人はリンクを貼っておくので確認するように


2. 日本国憲法において、「三権」はそれぞれどのような国家機関が持っているのかを答えなさい。
  • 立法権:国会
  • 行政権:内閣
  • 司法権:裁判所
 これはそのまま覚えるしかありません。

 そして、ここからが大切です。下には教科書や資料集などにも書いてある有名な図です。この図の意味内容を何も見ずに人に説明できるようにすることが目標です。

三権分立のしくみ


 なかなかこれをうまく覚えられないという人も多いと思います。そういう人は、下の問いの順番に言えるように練習してください。この順番でなければダメというわけではありませんが、整理方法をきちんと決めておいた方が知識の整理がつきやすいと思いますから、なかなか知識の整理がつかないという人は参考にしてみてください。


3. 国民と国会の関係について説明しなさい。

 まずは概念図を見ましょう。今日は画面をスクロールしなくてもいいように何回も同じ図を出しますよ。

三権分立のしくみ



 真ん中の人の絵から上の「国会」に向かって伸びている矢印のお話です。

 真ん中の人は「国民」です。国民が選挙で国会議員を選びます。国会議員というのは「国民の代表者」という位置づけです。立候補した人の中でこの人がいいなぁと思った人を国民が投票して、投票された数が多い人が国民の代表として国会に送り込まれます。先ほども述べたように、国会は立法権という権限を持っています。国会は国民の多数派の意見を尊重して法律を作ったりします。それが国会の役割です。国会の役割はホントはもっと多くあるのですが、一度にたくさんやると頭が混乱しますからとりあえず後回しです。

 国会は、衆議院参議院の2つが存在します。お互いは独立していますが、衆議院と参議院の2つの会議体で承認をされなければ法律が通りません。この2つの会議体の関係はとても大切なのですが、ここは三権分立をメインに解説をしたいので、ここでは省略します。


4. 国会と内閣の関係について説明しなさい。

三権分立のしくみ



 前問の解説の続きです。国民の多数派の価値観を持っている国会議員の中から、政治を行う権限(行政権)を持っている内閣のトップである内閣総理大臣指名します。新聞などで「首相(しゅしょう)」と呼ばれることもありますね。こうすると、国民の多数派の価値観を反映した政治を行えるという建前ができあがります。

 今までの話を簡単にまとめると下の図の通りです。

become_souridaijin_gairyaku

 一方で、せっかく国会議員の中から内閣のリーダーである内閣総理大臣だったのですが、国会の多数派の価値観に沿って政治をしてくれない内閣総理大臣が出てくると、国会を構成する会議体の1つである衆議院において内閣不信任決議案というものを提出して衆議院で可決されると、内閣は総辞職(全員辞める)するか、本当に国民の多数派の意見が衆議院に反映されているのかを国民に聞いてみたいと内閣が判断した場合は、衆議院を解散するかの2つのうちの1つを決めなければならなくなります。これが「国会」と「内閣」との間の関係です。衆議院の解散の話はまだまだくわしい話をしなければなりませんが、やはりここでは三権分立の話を中心に解説をしているので、くわしいことはまた後日の記事で書きたいと思います。


5. 内閣と裁判所の関係について説明しなさい。

三権分立のしくみ


 先ほどから述べている通り、「内閣」は、国民の多数派の価値観を持った国会において、国会議員の中から内閣総理大臣をトップとした集まりなのですが、多数派の意見が必ず正しい意見だとは限りませよね。憲法は国民の命や安全を守り、基本的人権を保障するために存在するものです。それに反するような法律が通ってしまってはやはりマズイというわけです。それを守る役割をするのが「裁判所」です。「裁判所」から「内閣」に向かってのびている矢印の「違憲審査権」とは、「憲法に違反することやった場合に審査することができる」ということです。司法権の範囲で、つまり法的な具体的な事件が起こった時に事件を解決するために使われた根拠となる法律の条文などが憲法に違反していないかどうかを確かめる権利だということを理解してください。

 逆の「内閣」から「裁判所」に向かってのびている矢印は主に裁判官の人事がらみの話ですね。基本的には裁判官の人事は裁判所の中で決めますが、内閣がそれを一応チェックするはたらきを持たせたと言われています。


 ちなみに、最高裁判所裁判官の長官についてだけはこのような道のりで就任します。

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 これは「天皇」のところでも少しやりましたし、裁判所のところでももう一度やります。


6. 裁判所と国会の関係について説明しなさい。


三権分立のしくみ


 裁判所は上の解説でも見たとおり、法的な具体的な事件を通して人権を守る国家機関であることを勉強しました。ですから、できるだけ多数派の意見が反映される権力からは「独立」した存在であるべきです。ですから、裁判官はよほどの理由がなければ辞めさせられることはありません。

 国会から裁判所に向いている矢印の意味は、その「よほどの理由」があった時に、国会が裁判を行う裁判官を裁判して裁判官を辞めさせることができることを示しています。これが弾劾裁判(だんがいさいばん)です。

 弾劾裁判があるということ以上に細かいところはまず問われることはありませんので、試験勉強としては弾劾裁判という言葉の意味が説明できるところまではやれるようにしてもらえればそれでOKです。


 試験勉強としてではなく、個人的に興味があるという人は、このページを見るとよいでしょう。


[URL] http://www.dangai.go.jp/kids/index.html


 それから、裁判所が国会に対してのびている矢印が違憲立法審査権。これも「裁判所から内閣に」のびている矢印と同じ目的です。憲法で大切にされている基本的人権に違反する法律を作った場合、裁判所に事件が持ち込まれたときに使われた法律が憲法に違反していないかどうかをチェックするものです。


7. 裁判所と国民の関係について説明しなさい。 
 
三権分立のしくみ

 
 最後に、「国民」と「裁判官」の関係です。先ほども述べたように、いくら裁判官がよほどの理由がないと辞めさせられることはないとは言っても、国民のチェックが入らないのはやはりよろしくありません。

 そこで、全ての裁判官について国民のチェックを入れることは現実的ではありませんから、最高裁判所裁判官のチェックを入れるようにしました。この最高裁判所の裁判官はきちんと裁判を行っているのかをチェックするのが、最高裁判所裁判官の国民審査です。これをいつやるのかと言ったら、衆議院議員選挙の時にやります。その時に全員やるのかと言えばそうではなく、最高裁判所裁判官に任命された後はじめて行われる衆議院議員選挙のとき、その後は10年経過するごとに衆議院選挙と合わせて行います。ですから、この2つの条件にあてはまる最高裁判所の裁判官が対象ということです。


 ずいぶん長くなりましたが、これが日本の三権分立制度のしくみです。ここはていねいに理屈を追ってみてください。専門用語の言葉の意味を確認しながら理解して、あとはこの専門用語が自由自在に使って何も見ずに人に説明できる状態にすることを目標にしてください。



 最後にもう一度言葉にしてまとめますね。最終的には下のように説明できれば合格です。

三権分立のしくみ


  1. 国民は選挙で国民の代表者である国会議員を選び、国会を構成します。
  2. 国会議員の中から内閣のリーダーである内閣総理大臣を指名します。一方、国民の多数派の意見を反映しない政治をした場合、国会の会議体の1つである衆議院が内閣不信任決議案を出すことができ、総辞職か衆議院の解散かを迫ることができます。
  3. 裁判所は内閣が行っている政治が憲法の基本的人権を保障して行っているかどうかを、裁判所に持ち込まれた具体的な事件を通して行う違憲審査権という権限があります。一方で、内閣は裁判所に対して裁判官の人事に介入します
  4. 裁判所で裁判を行う裁判官はよほどの理由がなければ辞めさせることはありませんが、裁判官が悪いことをした場合、国会が裁判官を辞めさせる弾劾裁判を行う権限があります。一方、裁判所から国会にのびている矢印は違憲立法審査権で、裁判所に持ち込まれた具体的な事件を解決するときに使用する条文が憲法が守ろうと言っている基本的人権を保障するものなのかをチェックします。
  5. 国民は最高裁判所の裁判官が正しい裁判をしているかどうかをチェックする国民審査を行う権利があります。 
 しっかりとやりましょう。そして、もっとくわしく「国会」「内閣」「裁判所」の勉強をしていくことになりますが、その際にはどのように国家機関がかかわっているのかを見るのに一番よい教材となり得ますので、またその都度ここに戻ってきて繰り返して理解を深めるようにしてください。



参考: http://www.kantei.go.jp/jp/kids/shakai/sankenburitsu/index.html