<問い>
  1. 個人や法人(会社)が、権利や義務をめぐって争う裁判を何と言うか。
  2. 犯罪行為について、有罪や無罪、または、その刑罰について争う裁判を何と言うか。
  3. 1.の裁判において、訴えを行った者及び訴えられた者のことをそれぞれ何というか。
  4. 2.の裁判において、捜査機関によって犯罪を犯したとの疑いを受けて捜査の対象となっているけれどもまだ刑事裁判を提起されていない者を何というか。
  5. 犯罪の疑いを受けて2.の裁判に提起(起訴)された者を何というか。
  6. 2.の裁判において、5.の者を起訴する者を何というか。
  7. 地方裁判所で行われる重大な犯罪についての裁判で、裁判官と一緒に被告人が有罪か無罪か、有罪の場合どのような刑にするのかを決める裁判制度のことを何というか。






<解答>
  1. 民事裁判
  2. 刑事裁判
  3. 訴えた方を原告といい、訴えられた方を被告という。
  4. 被疑者
  5. 被告人
  6. 検察官
  7. 裁判員制度


<解説> 
 「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「三権分立」の図を頭に置きながら勉強するようにしてください。

三権分立のしくみ

 どこの何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。もし、三権分立が分からないという人は、以下のシリーズを必ず見てから解説を見るようにしてください。

 今日は裁判の種類についてのお話です。

 裁判には一問一答でやってもらったとおり、全部で3つあります。これについて簡単に解説します。


 まずは民事裁判(みんじさいばん)についてです。人や法人(会社)が、権利や義務をめぐって争う裁判のことですが、この説明では少しイメージがわきにくいと思います。具体例を1つ言うと、金の貸し借りをめぐるトラブルなどは民事裁判です。

民事裁判

 訴える側のことを原告(げんこく)、訴えられた側を被告(ひこく)と言います。お金の貸し借りのトラブルの場合、「カネを返せ!」と言う側が原告です。それに対して「カネは借りていない、もらっただけだ!」と言って被告が応戦します。そしていろいろと証拠を出し合って、最後は裁判官が勝ち負けを判断します。これが民事裁判です。ただ、一般国民が法律の手続きや内容までを細かく理解している人は少ないです。そこで、原告または被告の代わりに代理人として裁判の手続きを行う人がいます。その代表例が弁護士(べんごし)です。原告代理人や被告代理人は弁護士がなる場合が多いです。そして、試験対策としては、原告と被告と裁判官がどこに座るのかまで出題されますから、上のイメージを覚えておきましょう。


 次に刑事裁判について見てみましょう。刑事裁判の流れを見てみます。

刑事裁判の流れ

 犯罪が起きると警察官は捜査を始め、犯人だと考える人を逮捕(身柄を拘束すること)します。そして検察官(けんさつかん)に送致し、ここで本格的に取り調べを行います。ちなみに、検察官は社会の利益を守る代表者として、捜査や裁判を通じて、事件の真相を明らかにし、犯人が適切に罰せられるよう、社会正義の実現を目指す役割を果たしています。捜査機関によって犯罪を犯したとの疑いを受けて捜査の対象となっているけれどもまだ刑事裁判を提起されていない者を被疑者(ひぎしゃ)と言います。

 検察官は刑事裁判を起こすかどうかを決定して刑事裁判を起こすと決めた場合、刑事裁判手続きに入ります。犯罪の疑いを受けて刑事裁判に提起(起訴)された者のことを被告人(ひこくにん)と言います。

 民事裁判で訴えられた側のことを被告(ひこく)と言いますが、「被告人」と「被告」の言葉の違いには十分に注意してください。新聞やテレビでは被告人のことを被告と言っていますが、これはマスコミ用語であって法律用語ではありません。試験ではバツになりますから、民事裁判で訴えられた側のことを被告(ひこく)、刑事裁判に提起(起訴)された者のことを被告人(ひこくにん)というということは押さえておきましょう。

刑事裁判のしくみ

 刑事法廷では、検察官が起訴した理由などを裁判官に説明したりします。検察官は司法試験に合格した優秀な人の中のさらに優秀な人しかなることができません。つまり法律のプロ中のプロです。それに対し被告人の多くは法律の知識なんかほとんど知りません。そこで刑事手続きにおいて弁護人という人が登場し、被告人の正当な権利利益を擁護するため、被告人にとって有利な事情を主張、立証します。なぜ被告人の権利を守るのかと言うと、仮に検察官が間違えて起訴してしまった場合、被告人の人権は大きく害されることになります。こうして弁護人が被告人の基本的人権を守れるような仕組みになっています。弁護人は主に弁護士がなります。

 このように、検察官が社会正義の実現のために働くのに対し、弁護人は被疑者や被告人の人権を守るために働いて、うまくバランスをとっているのが刑事手続です。ここで、「基本的人権」の「自由権」の中の「人身の自由」についての復習をやっておきましょう。


 試験対策的な話をすると、民事裁判と同様、刑事裁判の絵でどこに検察官が座るのかなどが出題されますから、場所もきちんと覚えておくようにしましょう。


 なお、凶悪な犯罪については、裁判官だけでなく一般市民も裁判に参加し、裁判官とともに刑の重さを決定する制度を整えました。これが裁判官制度(さいばんかんせいど)です。

裁判員裁判について

 裁判員は、選挙権を持っている人の中から抽選で選ばれ、裁判には6人の裁判員が参加し、3人の裁判官とともに有罪か無罪か、有罪の場合は刑の重さを決定します。ただ、地方裁判所で行われるすべての刑事裁判が裁判員制度の対象になっているのではなく、一定の重大な犯罪(殺人や強盗致死傷などの重い犯罪)についての裁判において行われます。