<問い>
  1. 地方裁判所で行われる重大な犯罪についての裁判で、裁判官と一緒に被告人が有罪か無罪か、有罪の場合どのような刑にするのかを決める裁判制度のことを何というか。





 
<解答>
  1. 裁判員制度
<解説>
 裁判員制度は、2009年(平成21年)5月に誕生した新しい司法制度です。

 今回は、教科書とは違った角度で裁判員制度について解説してみます。

 裁判員制度について規定された法律は、正しくは「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」と言います。ニックネームとして、「裁判員法」と呼ばれています。


 裁判員制度が導入されたきっかけについては、裁判員法第1条にこのように書いてあります。
 (趣旨)
第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員裁判官と共に 刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
 細かいところはどうでもいいです。青字で書かれた部分が裁判員制度を導入した理由だと思ってください。


 次に、裁判員法第1条には刑事訴訟手続と書いてありますが、すべての刑事訴訟手続きについて裁判員裁判は開かれるのでしょうか。その答えが第2条に書いてあります。
 (対象事件及び合議体の構成)
第二条第1項
 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
 一 死刑又は無期の懲役若しくは禁に当たる罪に係る事件
 二 裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
 刑事手続といっても、裁判員裁判が行われるのは地方裁判所だということです。そして、対象となる事件については条文を読んでいてもよく分かりませんね。一般的に、殺人罪、強盗致死傷罪(ごうとうちししょうざい)、現住建造物等放火罪(げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)、身代金目的誘拐罪(みのしろきんもくてきゆうかいざい)、危険運転致死罪(きけんうんてんちしざい)などがあげられていますが、筆者が刑法の条文を全て引っ張って裁判員法第2条第1号及び第2号にあてはまる犯罪をピックアップしてみました。あくまで資料です!
  • 外患援助
  • 現住建造物等放火 
  • ガス漏出等及び同致死傷 
  • 現住建造物等浸害 
  • 往来妨害及び同致死傷 
  • 汽車転覆等及び同致死 
  • 往来危険による汽車転覆等 
  • 浄水汚染等致死傷 
  • 水道毒物等混入及び同致死 
  • 通貨偽造及び行使等 
  • 詔書偽造等 
  • 強制わいせつ等致死傷 
  • 特別公務員職権濫用等致死傷 
  • 殺人
  • 傷害致死 
  • 危険運転致死傷 
  • 不同意堕胎致死傷 
  • 遺棄等致死傷 
  • 身代金目的略取等 
  • 事後強盗 
  • 昏酔強盗 
  • 強盗致死傷 
  • 強盗強姦及び同致死 
  • 建造物等損壊及び同致死傷
 裁判員裁判は、合議体(ごうぎたい)つまり複数の人たちが集まって行われる裁判です。その構成について条文では次のように言っています。必要な部分だけ抜粋してみます。
 (対象事件及び合議体の構成) 
第二条第2項
 合議体の裁判官の員数は三人裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。
 プロである裁判官3人と一般人である裁判員6名の合計9名で構成されています。  

 刑事裁判は、最終的には刑を決定し、どのような刑罰を科すのかを決定します。例えば、殺人罪について見てみましょう。
第199条
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
 ある事件が起こった時、そもそも殺人罪が成立するのかどうかを判断し、殺人罪が成立すると判断された場合、「死刑又は5年以上若しくは無期懲役」の範囲内でどのような刑罰を科すのかを決定します。

 裁判員裁判の場合、犯罪が成立するかどうか及びどのような刑罰を科すのかという判断は、裁判官と裁判員の合議体の過半数かつ裁判官及び裁判員のそれぞれ1人以 上が賛成しなければなりません(裁判員法67条1項)。なお、法令の解釈及び訴訟手続に関する判断については、プロでなければ分からない部分がありますから、裁判官の過半数の意見により決定されます(裁判員法6条2項、68条)。

 以上の話をまとめます。

裁判員裁判について
 
 多くのみなさんは将来、裁判員になる可能性があります。 裁判員に選任されて実際に裁判員になって裁判手続きに参加すると、守秘義務(しゅひぎむ)つまり秘密を守らなければなりません。裁判員の守秘義務をまとめた裁判員ネットのウェブサイトによると、守秘義務の対象は以下の表のとおりです。

裁判員の守秘義務違反
 
 これを守らないと、場合によっては6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。注意しましょう。